第2章

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『でもね、それくらいお前は俺の舞を見てくれていたってことさ…』 『でもあの時、店には客がたくさん…』 『店の客が見ていたのは俺の舞じゃない。「をんな屋」を名乗る変わり者を見に来ていただけさ…』 そう言ったナオトの表情が翳を帯びた。 『そんな中で俺の舞をちゃんと見ていたお前がひどい仕打ちをされてるのを、見ていられなかった。それだけのことだよ…』 ナオトは視線を落としてふっと笑う。リュウジはナオトに近づくとその手を強く握った。 『リュウジ?』 『俺…俺はあねさんの舞が好きだ』 真直ぐに自分を見つめるその視線。リュウジは子供の頃から何も変わってはいない。自分の主にひどい扱いをされていたにも関わらず、店の女たちをねえさんと呼び慕うリュウジは彼女たちから可愛がられている。 幼い時期を「言いなり」として過ごした者は女を憎む者が多い。オミは典型的な例だ。だからこそ彼は女を道具としか見ていない。自分のために利用できるならばする。そういう考えが自ずと身についてしまっているのだろう。
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