煙のむこう側

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「どうした、こんなところで。五号館なんて用が無いだろ」 「友達のレポート提出の付き添い。話が長くなりそうだったら、抜けてきちゃった」 「そうか」 理由になっていない理由だけれど、聞き返さないところが好き。 先輩の苦笑は、うまく見上げられない。 その代わり、流れてきた煙を思い切り頭から浴びる。 右隣の灰皿に手を伸ばした先輩が、私を振り返ってちょっと動きを止めた。 「……お前、あっち側行けよ」 「ええ~」 薄汚れたコンクリートの校舎に背中を預けて、子供みたいな返事をする。
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