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全身がぞっとどうしようもなく竦みあがった。
「君、あいつもああ言ってるし。もし興味あったら…、まぁ、無理かぁ。そりゃ」
男が話しかけてきた瞬間、頭を滅茶苦茶に振って後退り、スマホをもう一度持ち替えた。わたしが通話画面を出そうとするのに気づき、慌てたように手を伸ばしガシッとと手首を掴む。わたしの理性が吹っ飛び、腹の底からの悲鳴が口から漏れる。
嫌だ。…怖い!
「おい、怯えさせるなよ。人が来るだろうが」
目の端に他の男たちがあたふたと身なりを整えてるのがひっかかる。わたしの手を取った男は焦ったようにパッと離し、宥めるように必死に話しかけてきた。
「いや、嘘うそ。今のなし。ちょっと駄目元で言ってみただけだよ。君綺麗だし、その気があったらいいなぁ…、なんてね。まぁ常識で考えて普通無理だよね。あんな変態女と一緒なわけないよな」
男は話しながら、自分の姿に気がついて少し顔を赤らめて恥ずかしそうにジーンズをあげて前を閉めた。
「驚くのは無理ないと思うけど、通報は勘弁して。俺ら、風俗ライター仲間なんだけどさ。あんまり正直その、…お巡りさんと関わり持ちたくはないんだよね、仕事柄。俺もこんなとこでこんなことするのは本当、気が進まなかったんだけど」
あんまりそうは見えなかった…。
彼はまだしどけなく身体を拡げて息をついている彼女の方を顎で示した。
「そいつがどうしても外じゃなきゃ嫌だってきかなくてさ。全く変態でさ、つきあいきれないよ。とにかくもうこんなことはしないようにするから、警察沙汰だけはごめん、頼むから。あ、あと、もしこういうの、ほんのちょっとでも興味が湧いたならでいいんだけど」
呆然とするわたしの手に名刺を押しつけた。
「是非連絡して。絶対青姦なんかしないから。ちゃんと室内で、集中できるとこでやるからさ。…普段はそうしてるんだよ、全くもう…」
「おい、行くぞ。置いてくからな」
ぶつぶつ零す男に、身支度の済んだ他の二人が立ち去りながら声をかける。
「待て、俺も行くって。…あぁ、いい女だったのに」
「ああいう子と二人きりでじっくりやりたいよなぁやっぱ。変態も楽しめるけどさ」
「清楚で知的な子なんか、俺らの周りマジいないもんな…」
…どういう会話?
もしかしてわたしのことか、と思い当たった時には連中は遠ざかっていく途上だった。別に清楚でも知的でもない。普通だ。ただ、こういう子ばっかりの世界にいたら。
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