1年前のビターチョコ

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「……」  黙り込んでしまった瑞樹の様子に、苺は何かを感じ取る。 「もしかして、杏に用事ですか?」 「うん。杏と代わってくれないかな?」 「…瑞樹君。言いにくいんだけど、杏には…新しい恋人が居ます」 「…そうなんだ。杏に、新しい恋人?」  苺から、告げれらた「杏に新しい恋人」に、瑞樹は、自分から振ったのに大きなショックを受ける。 「…瑞樹君? 大丈夫ですか?」  心配そうに声を掛ける苺。  そんな彼女を心配させないように… 「あぁごめんね。大丈夫。そうだよね? 杏、可愛いもんね。他の男がほっとくわけないもんね。 そうだ! 苺ちゃん。杏に伝言頼んでいいかな?」 「いいですよ」 「お誕生日おめでとうって伝えてくれるかな?」 「わかりました。あぁ! そうだ! 瑞樹君? 伝言を伝える代わりに一つ訊いてもいいですか?」 「なに?」 「瑞樹君は、どうして、1年前、杏と別れたんですか?」 「…それは…」  言えるわけがない、自分の時間が欲しくて杏と別れたなんて。言える訳がない。 「あぁごめん。私ったらつい、いつもの癖で、また、杏に怒られる所だったよ? 瑞樹君。いまの質問忘れて」 「…苺ちゃん?」 「じゃあ、杏が戻ってきたみたいだから切るね? 伝言、杏に伝えとくね?」  電話を切った後、瑞樹は、しばらく画面を見つめていた。  ☆  キッチンに帰って来た瑞樹は、俊に全て話した。 「瑞樹。それは、1年前のお前が悪い。けど、杏ちゃんは新しい恋を見つけてる。だったらよかったじゃん」  俊は、瑞樹の肩を軽く叩く。  テーブルに並べられた料理が瑞樹には、ビターチョコに見えた。
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