鉄の間

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なんだよ。結局、結局正男の言う通りみんな死ぬんじゃないか...京もみなも、篤人もつくしも凜もみんな...みんな。 「ははっ...ははははは...」 もう、もうどうにでもなれ。殺せよ...ほら、ひと思いに殺せよ。 「あー...くそっ。」 目の前で助けられた命を失った。失ってしまった。由紀恵の死体を見上げる。さっきまで...生きていたんだよな。 「俺もここで死のうかな。」 こんなことになったならもう諦めるしかないのか。諦めて死を選んだほうが楽になれるよな。 「京...ごめんな。」 目を閉じた。あと数歩、あと数歩前に出ればギロチンが自分の身体を貫く。そしたら楽になれる気がする。痛みは一瞬だ。 「....こぇぇ。」 今になって死への恐怖が襲ってきた。こんな所で人生終わっていいのか?何かが壊れた、その壊れたものはなんだ。 「なんも...なんも壊れていないんじゃないのか?」 壊れたと思っていた何か。その何かがわからないのであれば...自分は、自分は。 「由紀恵、明...俺は、俺は...」 希望を捨てるな。生きるんだ。こんなところで死ぬな。生きて、生き抜いて正男をぶん殴る。 「あーそっか、俺、ここで死んじゃだめなんだ。」 振り返って出口を見つめる。あそこまで、あそこまで行けたら... 「やってやるよ...生き抜いてやる。死んでも死に切れないなら...死ぬまで生きろ。」 自分に言い聞かせて勇気ある一歩を踏み出した。次々と、前後左右から襲い来るギロチンの刃を避ける。一瞬でも気を抜くな。死ぬぞ。 「...やった。」 出口に辿りついた。重い扉を開ける。そこには長い廊下...その奥にはもうひとつ扉があった。 男子10番 沼道 明 女子 6番 斎藤 由紀恵 死亡 残り21人 「鉄の間」生存者 男子4番 小澤 大輝
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