私はあなたを知っている

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「私はあなたの事を、世界で一番知っている。きっと、家族の誰よりも。」 ある晴れた夏の日、うたた寝から目覚めた私が横たわるベッドの傍らに突然現れた彼女は、私の「あなたは誰?」という問いかけに、そう答えた。 事情があって彼女は名前を明かせないらしい。 初めて会ったはずなのに、どこかすごく親近感を感じる、不思議な人。 年齢は20代後半くらいの、柔らかな微笑みを浮かべた、大人の女性。 艶やかな漆黒が美しい、肩までの髪に、淡い水色のワンピースという姿は清楚な雰囲気を醸し出していた。 私は17歳の高校2年生で、名前は滝川由香里。学校の帰りに交通事故に遭ったらしく、それによって記憶を失い、病院にいると、初めて目を覚ました時に私の母が教えてくれた。 母の事も、靄のかかった記憶の中だ。 今私の目の前にいる女性は正体不明の人なのに、何故か自然と恐怖感は起こらなかった。
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