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対面式のホーム。
高い建物が周りに見えず、騒音もない。
聞こえてくるのは駅の自動放送だけ。
彼が京急三崎口駅に到着したのは15時頃だった。
上はネイビーの長袖、下は黒いジーンズを着こなし黒地に白くスポーツメーカーのロゴが入ったショルダーバックを肩にかけた彼は赤い電車から三崎の地に踏み入れた。
電車を降りて出口の階段へ向かう途中、トンネルとトンネルの入り口で途切れた二本の線路が見えた。
ここのトンネルは何処へ伸びているのだろう?
降りたった彼は心のなかでそう思った。
階段を登り、改札を出る。
そして階段を降りてバスロータリーに出ると、そこは都会の忙しさなんてまったくない穏やかでまったりとしたところだった。
円状のバスロータリー。
円の中心には数台の路線バスが並んでいた。
フリーライターである彼の目的は、三崎港や三崎マグロの取材だった。
早速彼は三崎港へ向かうバスを探し始めた。
そして、5分もかからないうちに三崎港方面の停留所を発見した。
停留所には『マグロは三崎港で!』の幟と5人ほどの行列。
これだけ見れば、ここから出るバスが三崎港に向かうのがわかったからだ。
運のいいことに10分後三崎港方面のバスが止まるようだ。
バスを待っている間に彼は小さなデジタルカメラを取り出し、三崎口駅周辺の風景を小さな直方体に収めていった。
そうこうしているうちに、彼の目の前には赤と水色のバスが現れた。
城ヶ島行き
彼はそのバスへと吸い込まれた。
彼の前に並んでいた5人はすでに席に座っていた。
彼はバスの最後部の席の窓側に座った。
彼が座った直後にこのバスは動き出した。
バスは片側一車線の海岸線の道を進んでいった。
三崎港へ行くことになったのは彼の突然の思いつきだった。
これだっていういいネタが見つからない時に出かけるのが彼の癖だ。
だけど、ただ暇で出かけるのではなく、出かけた時に、出かけた先のそのままを取材したくなる衝動が彼にはあるようだ。
だからこうして、今日も小さな旅に出ているのだ。
バスに揺られること20分、彼が目指していた三崎港のバス停にとまった。
バスを降りると、いくつもの漁船が並んでいる光景が彼の目に飛び込んできた。
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