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「いいや、大丈夫。やり過ぎないように、ペースは見直すけれど」
「せっかく復縁したのに、また仕事ばっかりしだしたら、今度こそ美央ちゃんに捨てられるぞ」
「さすがに僕も美央の大事さが身にしみて分かったよ。二度も恋に落ちたんだから。今度こそ本当に大事にしたいって思うんだ」
「へえ……?」
四角い顔に不釣り合いなふたつの丸い目が、驚いたように僕を見る。
「それに、休んでた分取り返さないと。これからは美央の分も稼がなきゃいけないからさ」
「え、ってことは……?」
次の言葉を誘導するかのごとく語尾が上がって、僕はつい吹き出してしまった。
「プロポーズした」
「で、返事は?!」
「オーケー」
「馬鹿野郎ー!!」
言葉と表情をちぐはぐにして、小笠原は叫び声を上げた。何事かとテーブルに視線が集まったが、友人が泣きながら見ず知らずの他人に僕の結婚話をはじめると、何故か店の中が沸き立った。酔う前からとんだ大騒ぎだ。
「何もかも勇人に先を越されてるが、子供は俺が先だからな」
なんとも返事が出来ないまま苦笑いするしかなかったが、いつの間にか僕たちのテーブルに集まった人たちが、小笠原の話す僕の物語に聞き入っている。
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