スウィート・リトル・メモリーズ

17/17
46人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「私も好きだよ」  少し間を置いて返ってきたのは、予想に反しての涙声だった。僕が焦ると「嬉しいの、ただそれだけだよ」と美央は声のトーンを少し上げた。  通話を終えて、ジャケットの内ポケットにスマートフォンをしまった。  僕はネオンに埋め尽くされた明るい空を見上げた。  まだ全てを思い出せているわけではないのかもしれない。でも、そうだとしても今ならそれすらも笑い飛ばすことが出来るだろう。友人や恋人のくれたさりげない一言が、優しさが、今の僕を、そしてこれからの僕を支えてくれるから。    家に帰れば、大切な人が僕を待ってくれている。胸にある温かな幸福感が、記憶の隙間を優しく満たしていた。 了
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!