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「そっか。胡桃ちゃん、独り暮らしだったんだ。やっぱり彼氏が泊まりに来たりするの?」
「来ません。ほら、おしゃべりする元気があるなら教室に戻りなさい」
「おやすみー」
スタスタと歩いて、いつものように奥のベッドに入ると日向くんは私を手招きした。
「ん? 何?」
ベッドに横になった日向くんを見るのは好き。なんだかかわいいから。
そばに立って、掛け布団をきちんとかけ直してあげた。
「胡桃ちゃんって恋人いないんでしょ?」
「ノーコメント」
「いたら、ザワッちの誘いなんて、すぐに断るよな」
「ああ、そうか。恋人がいるからって断ればいいのか」
何でそれを思いつかなかったんだろう。本当にいるかいないかなんて中沢先生にわかるはずないんだから。
「いるの⁉」
ガバッと日向くんが起き上がったから、ビックリしてのけ反ってしまった。
「いや、いないけど。……あ、今のは内緒にしててね。いるって言って断るから」
「わかった。あー、良かった」
ドサッとベッドに沈み込んだ日向くんは私を見上げて微笑んだ。
その優しい笑顔にドキドキしてしまう。
ダメだ、ダメだ。日向くんは生徒なんだから。
「おやすみ」
もう一度お布団をかけ直して、机に戻った。
「胡桃ちゃん、好きな人いる?」
「ノーコメント」
「俺はいるよ」
「……青春だね」
「何それ」
日向くんが好きな子ぐらい知っている。同じクラスの有川さん。美男美女でお似合いだって噂になっているから。
青春だなぁ。私なんてこの歳になるまで、男の子を好きになったこともなかった。
二次元のイケメンたちがいれば幸せだったから。
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