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はっ?
隣の奥さんな訳ないだろ?
「俺からだけど…」
菊乃の顔は一気に華やぎ
「嬉しい」
花束を胸に抱き寄せた
「今日は嬉しい事がいっぱいだわ」
俺には不可解な言葉を残し菊乃はダイニングに消えていった
今日はカレーか…
廊下にまでスパイスの香りが届いている
リビングのソファーに座り菊乃を観察する
『浮気してるのか?』
なんて俺からはとても言えない
花束を渡した時や
いま、キッチンで料理をする菊乃を見ていると、そんな気配はみじんも感じない
女は女優…というが菊乃はそんなタイプの女じゃない
「雅之さん」
支度が整ったらしい
テーブルの中央には俺が贈ったチューリップが白い陶器の花瓶に生けられている
「可愛いチューリップ…ありがとう」
菊乃は目を細めてチューリップを眺めている
「とても好きな花なの」
「なら良かったよ。」
菊乃は俺の顔をジッと見つめ
「憶えてる?結婚前にも花を贈ってくれたでしょ?」
「ああ。これと同じチューリップだったな」
良かった…
菊乃は憶えていてくれた
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