10.Last Snow 

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想いは……交わさずとも通じているのですね……。 心優しい貴方さまの御慈悲のもとに……。 ふいに結界が一瞬歪められる。 桜瑛と二人、互いの顔を見合わせる。 屋敷の扉が開けられ姿を見せたのは徳力の要たち……。 全てを受け入れて覚悟を決めた宝さまが静かに姿を見せる。 姿を見せたのは、宝さま。 その左には御霊分の契りを交わした半身、飛翔殿。 そして右手には徳力のさくら。 隣に控える桜瑛がゴクリと飲み込む。 「お待ちしていました。  ……宝さま……」 秋月の長として最後の努め。 向かい合ったまま静かにお辞儀をする。 私に続いて桜瑛もまた……ならった……。 言葉にならない声は紡がれることはない。 ただ私たちを黙って見据えると、 両脇に並ぶ二人に片手のみで制すると一歩ずつ ゆっくりと歩みを進める。 互いの距離が1メートルのところまで縮まった時、 宝さまの歩みがピタリと止まった。 「貴咲、我もとに姿を示せ」 虚空に轟くその叫びの後、 その指先は流麗文字を描き詠唱が重なる。 「雷龍降臨。  来たれっ!!貴咲」 次に声が天に響いた時、 空が切り裂かれ稲光と共に銀色の髪を宿した 龍神が宝さまの隣に降り立つ。 続いて精神を集中させると、 その掌から神剣を創生していく。 鞘である宝さまのお体から解き放たれた剣は 美しく全てを吸い込むような妖艶な輝きを放って煌めく。 創生された……その剣の切っ先に 跪いて触れて祈りを捧げる、さくら。 全ての儀式を二人して……見守ると、 その神剣の切っ先を私たち二人へと向ける。
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