10.Last Snow 

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『……姫様……。  どうか悲しまないで。  私は幸せよ。  今生でも貴方に出逢えて……』 祈りながら混在する桜瑛の意識に シンクロしていくと溢れることなく 流れ込んでくる桜瑛の愛情。 凍ざした(とざした)ままの心では 決して気が付くことのなかった 桜瑛の深い温もり……。 二人、心を通わせた中、 宝さまの神剣が悲しげに桜瑛に向いていく。 その剣をも愛しそうに見つめる桜瑛。 桜瑛の意識越しに伝わる宝さまの表情は 一つ一つ……ご自身の大切なものを犠牲にして迎えられたのを 物語(ものがたる)悲しみ深き双眸を伏せて。 次の瞬間、その切っ先は桜瑛の体を貫いた。 桜瑛の体内に吸い込まれるように入っていった その剣は……妖し(あやかし)にも似て不思議な光を放つ。 ゆっくりと空を力なく舞うその体を 抱きとめようと駆けだした私の元に美しい光の線が走る。 その屋敷に来て以来一度たりとも話されず、 笑顔を向けることもなく……凍結されつづけた表情を 浮かべていた宝さまの口元が微かに笑みを浮かべた途端、 その心臓に鈍痛が走った。 さようなら……私が愛した愛しい貴方。 貴方たちの未来に祝福の祈りを。
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