修学旅行

12/40
245人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
さっきまではたくさんの人がいたのに、地震が収まると一斉に麓に降りてしまい今は朋佳と二人だけだ。 「行こう」 香里は朋佳に向かって声をかけた。 「うん」 朋佳が頷いて、二人で麓を目指して滑りだしたのだが、まだ教えてもらう前だったこともあって、少し滑っては転んでの繰り返しで、なかなか先に進めない。 早く助けてあげたいのに……。 それにしても、こんなことってあるのだろうか。 ずっと良いなぁと思っていた、隣のクラスの井上翔馬。 ただ何となく良いなぁと思っていた彼が、スノーボードで滑走する姿を見て、カッコイイと思った。 一気に大好きになって、勇気を振り絞ってコーチを頼んだら、快く引き受けてくれて、一気に距離を縮めるチャンスだったのに、選りにも選ってこんな時に、まさかの大地震。 そのときまた大きな余震で地面が揺れる。 「きゃぁああ」 朋佳が悲鳴を上げて、その場にしゃがみ込んだ。 香里も怖くてしゃがみ込んだけど、怖すぎて悲鳴は出なかった。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!