1年後

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そう心に刻まれた私は、一週間後にようやく登校できるようになったその日に、その桜の木の元へと向かった。 守ってくれてありがとう、って……、お礼を言う為に。 始めはホントに、軽い気持ちだったように思う。 けれど、傷跡のせいで必要以上に人の目を意識するようになっていた私は、それを気にせず話ができるその場所がいつしか心の癒しになっていた。 返事が返ってくる訳でもないのに、毎日その桜の木に凭れて、どうってことのない独り言を延々と話し続けていた。 友達とうまく話せなくなってしまった寂しさを、紛らわせる為に……。 (……そうや……。思い出した……) 手紙を胸に抱きしめ、ぐいぐいと涙を拭う。 引っ越しが決まって荷物整理をしていた時に、この宝箱を手に取って……もう使うことがないんだって思ったら哀しくなって……もう捨てちゃおうって思って……。 でもお母さん達に見つかったら何か言われると思った私は、これをどこかに埋めてしまおうと思ったんだ。  
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