26人が本棚に入れています
本棚に追加
/501ページ
ビルの前に立ち、自動ドアに書かれた文字を見て私は一瞬たじろいだ。
りゅうこかいとおさかぐみ……。
「水樹ちゃん、参りましょう」
「ちょっと、沙織。ちょっと待って。龍琥会遠坂組って書いてるけど?」
「覚悟の上で来ております。水樹ちゃんも御覚悟を」
表情を硬くして、沙織がそのまま自動ドアをすり抜けた。
沙織に吸い寄せられるかの様に自動ドアをすり抜け、エントランスホールからエレベーターへ向かおうとする彼女の後ろ姿を、足早に追った。
エレベーターの前に立った沙織に寄り添うように近づき、小声で聞いた。
「ねえ沙織……。此処って、その……ヤクザの__」
その時、後ろに人の気配を感じて私は恐怖のあまり唾を飲み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!