35.塀の外の木の下で

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この五年間、木村柚樹という院生を観察した結果、院長自身が彼の罪状に疑問を抱いてしまったからだ。  自宅に届いた怪しげな告発文に目を通し、抱いた疑問は確信に変わった。 そこに書かれた犯行の詳細は、所々あやふやな木村の自白よりもずっと、総毛立つほど整合性がとれていたのである。 こんなものが書ける人物は想像に難くない、とんだサイコパスといえよう。  この怪人物は真相の公開をちらつかせ、木村柚樹の出所を要求してきた。 つまり突然送り付けられた告発文は、大胆不敵な脅迫状でもあったのだ。
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