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「…冬夜っていい奴だよな。小太郎の気持ちが少しわかるよ」
その言葉に、俺はここに来ることになった経緯を思い出した。
自然と溜め息が出る。
「…あー、と。実は泊めてほしくて来たんだけどさ。やっぱ無理…だよな?」
「え? いや、別にいいけど…どうしたの」
「…………」
小太郎と一緒にいたくない。
理由なんてそれだけだった。
あまりにも情けない理由で、言い辛い。
「…まあ、いいや。それじゃ、母さんに冬夜が泊まることを言ってくるよ」
何も聞かれなかったことにホッとする。
「…悪いな」
「いいって。これくらい気にすんな」
笑って森が部屋を出ていく。
しばらくぼんやりと宙を眺めて、ふと家に連絡しないと、と思い出した。
鞄から携帯を取り出して、家にかける。
「…あ、母さん。今日、ダチの家に泊まるから」
小太郎がどうしてるか聞きたい気もしたが、結局それだけ伝えて切った。
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