サクラ舞う宙

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『〓かしい写〓 見つ〓た〓!!』  ノイズだらけのメールに添付されていたのは、中学の入学式の時の写真と懐かしい街の写真。どちらの写真も桜の木が写っていたが、データは減衰して色褪せて、花吹雪のようにノイズが舞っていた。 「ロブ、この写真復元できる?」  解析室に居たロブに呼びかけると「ぁん?」と退屈そうに視線を投げてきた。スレートPCをポートに置くと、プロジェクターから中空にノイズだらけの写真が投影される。 「お、若いねぇ。彼女か?」 「まさか。続く訳ない」  だよなぁと苦笑したロブに苦笑いを返しながらも、それでも彼女の心の片隅にまだ自分の居場所がある事が嬉しくなかったと言ったら嘘だった。  「んー、減衰によるノイズだからダメだな」  復元をかけてもらった写真は、相変わらずデータの超長距離転送による情報の減衰で出来たノイズで桜吹雪が舞っていた。端っから期待していなかった。ただほんの少し、元通りになる可能性があるか聞いてみたかっただけなのだ。  それに、この写真なら記憶に残っているから、復元されなくたって構わなかった。
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