副会長様と夏休みと、

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「…私も、一緒に帰ってもいいのですか?」 「何言ってるの、当たり前じゃないのー!」 抱き締められて、すりすりと頬擦りされながら隣の祥司さんを見上げると、にっこりと頷いて頭を撫でてくれ、安心してほっと息を吐き出した。 「どうやら、この後木崎を連れて学校に戻る必要は無さそうだね」 「そうっすねー」 「鳥居先生…もしかして、この為に待っていてくださったのですか?」 「伊瀬の具合を確認するついでだよ。木崎は一緒に帰りたがるだろうとは思ったけれど、伊瀬の具合次第では伊瀬さんのお宅に木崎を連れて帰るのが難しい可能性もあるしね。」 茜さんにぐりぐりスリスリと好き放題にされているところに、いつものようにふんわりと柔らかい笑顔を浮かべた鳥居と、嬉しそうな宇野の二人がかりに頭を撫で回され、うっかり頭がもげそうになってしまった。 「…っあの、ですが…伊瀬は高校二年の頃からの記憶がなくなってしまっているのでしょう?私が一緒に帰ったとして、伊瀬になんと説明したらいいのか…」 伊瀬に出会ったのは二年前の夏。何故、よりによって出会った後の記憶が無くなってしまったんだろう。 考えたところでどうにもならないことはわかってはいるけれど、じわじわと目の奥が熱くなっていき、泣いてしまいそうになるのを堪えて顔をあげる。 「氷呂君がいくら可愛くても、流石に「恋人です」って言ったら龍司もびっくりするからね。うちに来ても違和感の無い設定を考えたよ!」 「は…はあ…」 にっこりと笑った祥司さんの笑顔が、とんでもない事を言い出す直前の茜さんと瓜二つであることを言及してもいいのだろうか。
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