プロローグ

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「成影、しっかりやっておくのよ」  母が布団にこもる俺にそう言う。  うるさいしめんどくさいから、俺は何も言わずにさっさと母と父が家から出る事を望んでいた。 「ご飯は冷凍のパスタとかカップラーメンでもいいから食べなさいね」  母の声しかしないところを考えると、父はもう出て行ったのだろう。…まぁ、どうでもいいけどな。 「…それじゃ行ってくるわ、お土産楽しみにしててね」  それから数秒後、ドアが閉まる音が聞こえた。  確か両親は何処かへ旅行に行くそうだ。この真夏によく家から出ようと思うよな。感心するよ。  高校の夏休みに入った俺も、旅行に行くかと誘われたが断った。だってめんどくさいし。愛する布団と一緒に過ごす方が何倍も幸せだ。  確かこれから数日間、親がいないから俺の質の良い睡眠の条件は揃っている。 「ん~~~、これから数日間、今まで頑張ってきた俺に!安眠が約束された!」  そう言ってスマホの電源を落とす。  こんな性格をしている俺に(ついでに友達が一人もいない)連絡が来るとは思えないが、業者や親から来る可能性がある。  俺の睡眠を脅かす存在は、一つとして存在してはいけない。 「さて、と…寝るか」  俺はそう言って深い眠りについた。  二度と覚めない眠りに。  
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