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でも、確かに今日の颯真さんはちょっとだけいつもと違っていた。
上着を忘れて会いに来てくれたし、柾の事で怒ってくれたし。
いつも優しい笑顔にときめくんだけど、でも今日は、ピリピリした空気の中で見せるセクシーな横顔とか、真摯な顔とか、全てドキドキした。
「わかば」
「はい」
「上がってくるエレベーターに、誰も乗っていなかったら、君の初めてを貰う」
「は、初めて!?」
「恋愛経験が無いみたいだから、経験しとこっか」
逃げられないように、手を掴まれる。
お酒を飲んだ私も颯真さんも、ほんのりと暖かい。
階数を示す光が、どんどん上がってくる。
18階の此処まで、一階も止まっていない。
上の階に行く方か、此処で降りる方がいてくれたら――。
そんな望みを持ちながらも、少しだけ期待もしてしまう。
颯真さんになら初めてを奪われて良い。
「あのね、一つだけおさらいしとくよ」
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