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1羽の鴉の鳴き声が始まりだった。
その鴉は共喰いを始めた。他の鴉も次から次へと共喰いを始め、夕焼けに鴉の死骸が山積みに転がった。
1番最初に共喰いを始めた鴉は生き残り、仲間達の死骸を突いていた。
彼らはそれを〈狂気遺伝子〉と呼んだ。誰から誰に伝染したのかは分からない。
研究室で眠っている少女が目を覚ました。
真っ赤な血の涙を流し、鉄壁の壁を拳で砕いた。
彼女の名前は彼女自身が見つけていた。
足跡に血が付着して、彼女の白い服までも赤く汚れる。
研究者の1人が「有り得ない」と呟いた。
今まで〈狂気遺伝子〉にかかって制御できる人間はいなかった。
彼女は血塗れだったが、至って冷静だった。
血は彼女の目から迸る。
死人の瞳には深紅の血がよく似合った。
彼女を観察してきたレイがカルテを見ながら、ほくそ笑む。
「実験は成功よ。これで、〝魔〟を退治できる」
カルテを隣の男に渡す。
男は慌てて受け取って言った。
「レイさん、〈狂気遺伝子〉の娘が死んだ後、蘇ると〈狂気遺伝子〉を制御できるなんて保証はどこに?」
「ない」
「え?」
「可能性だけよ。小娘、名乗りなさい」
彼女はレイを見つめていた。
「私はみりあ」
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