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「俺はあんたに会いたくなかったんですよ」
陵介が冗談っぽく苦情を入れると、ナツメは顔をしかめてそっぽを向いた。
まぁ、そうだろうなとは正直思う。
明らかに旅行に行く格好で二人揃って現れれば、傷心のナツメには嫌みにしか見えなくても不思議はなかった。
「ナツメくん…そういうこと言って陵介苛めるのやめてくれる?」
でもここは、陵介の気持ちの方が俺には大事だから、ナツメには睨みを効かせておく。
「…っ…本音ですから」
ちょっと怯んだような顔をして、ナツメはそれでも負けじと言い返してきた。
「…悪かったよ。でもどうしても…お前に頑張れって言いたかったんだよ」
陵介は素直に謝って、ストレートにここへ来た目的を告げた。
陵介のド直球に、ナツメの方が折れてはぁっと大きくため息をついた。
「…センパイはいつでも狡いですね」
ため息混じりに、ナツメはまた陵介にズルいと言った。
「嫌いにさせてくれない」
「…なに言ってんだ」
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