終の章

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サトルは黒刀を鞘にしまいながら、少年に声を掛ける。 「大丈夫……俺は君たちを殺したりなんかしない。怖がらせてゴメン……。でも、この人は本当に人間なんだ。君のお姉ちゃんにも、安心するように伝えてくれるかな?」 そう言いながら徐々に赤い瞳を白へと戻して行くサトル。 優しい表情になったサトルを見て安心したのか、少年は少女に駆け寄り背中を擦る。 「お姉ちゃん……この人達、悪い人じゃないかも!」 少年がそう言って少女の肩を何度か叩くと、少女は赤く腫れた目をサトルに向けてヘッドホンを片方だけ持ち上げる。 「何で……私達を殺さないの?」 「君たちがどんな大人を見てきたのかは知らないけど、皆が皆、悪魔みたいな人間じゃ無い。 俺にも君のように命を懸けてでも守らないといけない妹が居るんだ……」 サトルがそう言うと、少女は少し心を許したのか、眉間に深く入っていた皺を緩めた。
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