第0章 落下

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ばさばさっ。 小さなつむじ風でも起こしそうな重たい羽音が耳に届いたのは、すでに手も足も、体のどこかしこもが、全てから離れたあとだった。 バレッタが外れ、奈落へ落ちていった。 重力を止めなければ。 そう思って反射的に手を出した瞬間、が目に入った。 に気を取られた一瞬がタイミングを狂わせ、手は何もつかめずに空を切った。 結果、体は宙に投げ出されていた。 タイヤのスリップ音が立て続けに響いた。 バレッタが、キン、とアスファルトにぶつかって跳ねた。 重量感のある衝突音と、ガラスが砕ける音がした。 そして、静寂。 一連の出来事をしめくくるように、黒い羽根が一枚、ひらひらとゆっくり落ちていった。
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