第1章

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 本当に小さかった頃。  その時はまだ、私は自分のことばかりだったのだと思う。  熱が出るのも、咳をするのも、一日中ベッドの中で過ごすことも辛かったけど、でもそれが当たり前だった。辛いことは当たり前にあって、それと同じくらい楽しいこともたくさんあって。家族で出かけたり、テレビを見たり、歌を歌ったり。そんなことだけで、私は大切なものをたくさん持つ事ができた。  でも、だんだんと大きくなって、学校で他の友達と自分を比べるようになると、私の世界は変わってしまった。    どうして、すぐに熱が出てしまうの?  どうして、病院にずっといなくちゃいけないの?  どうして、やりたいことができないの?  どうして、どうして、どうして…………?  私の普通は、普通じゃないと知ってしまった。普通はもっと、楽しいで溢れているものだと思ってしまった。私の普通は、不幸なのだと考えてしまった……。  そしたら私は、大切なものをいくつもなくしていった。  たとえば、信じること  たとえば、頑張ること  たとえば、夢を見ること    他にもたくさんのものをなくして、気付いたら無気力な高校生。人生を諦めて、ただぼんやり過ごしてた。自分の人生だけど、自分ではどうすることもできないから。ただ周りの流れに乗せられて、ゆらゆらしながら生きていく。  そう、思っていたけれど。
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