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夏休みに入るとすぐ 僕と妹はお婆ちゃんの家に預けられた 冷戦状態だった両親はとうとう決着をつける気になったようだ 休み明け僕たちの生活は一変するのだろう 家族がばらばらになってしまうのは悲しい 本当に悲しい けど、 空気のぱんぱんに詰まったふうせんみたいに今にも破裂しそうな雰囲気の家は… もう要らない 妹は自分を責めてばかりいる 母方のお婆ちゃんの家はど田舎だった びっくりだ スマホはほとんど圏外 テレビは3局 ネットは無し 僕は何をして過ごせば良いのだろう? 山の中の一軒家 おばあちゃんは一人暮らし 空気のせいか、水のせいか、歩き回るからか、齢90を超えても元気がいい 計算したらわかると思うけど うちの母は晩婚でおばあちゃんの末の子供だ 意外な事に妹はすぐにこの田舎ぐらしに慣れた しかも楽しんでいる おばあちゃんの後について料理、洗濯、畑仕事、裁縫 常家豆腐なんてもの、おばあちゃんはどこで覚えてきたのだろう? すぐに慣れてしまった妹とは反対に僕は途方に暮れていた 持ってきたマンガはすでに読みあきてしまった 仕方なくベタに昆虫採集でもやってみるかと補虫網と虫かごを持って外に出てみた でもやっぱり素人で カブトムシがどの木にいるかわからず 蝉にはオシッコひっかけられるし トンボにはバカにされっぱなしだ でも、まあ 良いこともあった 例年になく宿題が8月に入る前に終わりそうだ しかし、そうなると本格的に僕にはすることが無くなってしまう そんなある日 おばあちゃんが泳ぐのに良い川があると教えてくれた それで母さんは水着を持っていけと言っていたのか 僕は迷わずその案に乗っかった 澄んだ水はひんやりしてとても心地よく どうした具合か天然のプールのようになった場所も滑り台のような所もあった 最初の頃は一緒に来ていたおばあちゃんと妹は3日もすると もういい と ついてこなくなった 僕は下手だったクロールの技術がメキメキ上達した でもそれが慢心を招いたらしい 苦しかった たくさん水を飲んだ 上と下がわからなくなりパニックを起こす 意識が遠くなりかけた僕の視界に天女が現れた
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