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いつもと同じルートで館内を見て回り、オオメジロザメの水槽前に来た。
「オオメジロザメ」
じっと水槽を見つめている彼女に向かって言う。
「本州の水族館では、こ……」
「ここにしかいない」
えっ?
彼女は続けた。
「凶暴で、人も襲う……?」
「なんで、それ……」
開いた口が塞がらない。
「この水槽を見たとき、頭の中であなたの声が聞こえたの」
彼女も同じように戸惑っているのに、目はキラキラしていて。
「でも少ししか思い出せないから、なんかモヤモヤする」
眉を八の字にした彼女の髪を、梳かすように撫でる。
「充分だよ」
彼女の心の中に、ちゃんと“僕”がいたことが嬉しいから。
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