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唸る俺を見てノアはにやにやしながら頬杖をついている。
「なんだよ……おまえは分かったのか」
「うん、バルコニーから脱出不可能なことは分かった」
「じゃあ犯人が使った脱出経路は?」
「それはまだ」
「何も分かってないんじゃねぇか」
「大切なのは可能性を潰していくことだよ」
バルコニーから脱出は不可能。
探偵殿からお墨付きをいただいたので、俺は書斎に戻って捜査を再開した。
部屋に戻ってすぐ下、サッシの横に膝ほどの深さと片腕ほどの横幅がある木箱を見つけた。
開いてみると中は空っぽで、妙に重い。
そう、普通ならまさにこんな箱に死体を詰めて湖に捨ててしまえばいいと考えないか?
この程度の重さだと次第に腐敗したガスで木箱は浮き上がってくるだろうが、だだっ広い湖では見つからないかもしれない。
湖上の密室。
どうやって犯人は外へ出たのか。
何の為に犯人は死体を磔にして部屋を荒らしたのか。
怪奇的にも程がある。奇々怪々だ。
ズシン、と肩が重くなった気がして、俺は少し猫背になった。
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