第4章

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 いくら怒っているからって、それはどうなんだ。 ーーーもういい! いくらなんでも、こんなのってない。 こめかみの辺りに熱が集まって、首の根元あたりがムカムカする。 僕でさえ逃げずにこの場に来たっていうのに、湊さんは連絡すら返してこない。  さっきまでは今日のデートで湊さんとどう過ごせばいいのかわからず不安だったけれど、今はその不安が丸ごと怒りに変わっていた。 その怒りのまま、僕は浩介に電話をかけていた。 何コールか呼び出し音がなった後、浩介が不機嫌そうな声で電話口に出る。 「真幸、テメェ……朝っぱらから電話なんてかけてくんじゃねえよ!」 「聞いてよ浩介!」 「え、あ?な、なんだ急に……」 「湊さんが連絡無視するんだよ!」 「はあ……寝てんじゃねえの?休みの日だし、遅くまで寝てるなんてこと珍しくないだろ」 「ちがう!今日はデートの約束してて、待ち合わせの時間に来たのに……昨日のことがあるからって、いくらなんでもひどいと思わない?」 「昨日のこと?なあ、話が全然見えねえんだけど」  僕は怒りに任せて事の顛末を浩介にぶちまけた。 浩介は気のない相槌を打っていたけれど、僕がぜんぶ話し終えて鼻息荒く「浩介はどう思う?」と聞いたら、ただ一言 「どっちもどっち」 と言って電話を切った。 「あ、ちょ、浩介!…………切れた」 誰かに話したらちょっとでもスッキリするじゃないかと思ったのに、浩介の適当な対応のおかげで苛立ちは増す一方。 かと言って、こんな話をできる友達は他にいない。 ーーーあ、そうだ……アキちゃん  アキちゃんなら僕が湊さんと付き合ってることを知っているし、昨日何があったかも知ってる。 いや、でも、湊さんがヘソを曲げた原因に繋がってるアキちゃんに相談するのはさすがにまずいか……。 で、でも、具合が良くなったかも気になる。 だけど、アキちゃんに連絡したことをあとで湊さんが知ったら、絶対怒るし……。 「ああもう……!!」  とにかく、この苛立ちをおさめたい。 助けを求めるような気持ちであたりを見回すと、チェーンのコーヒーショップの看板が目に入った。 そうだ、あったかいものでも飲んで、一度落ち着こう。  猛然と歩いて店に入って来た僕を見て、コーヒショップの店員さんはちょっと引いたような顔をしていた。 いつもならそういう人の目が気になるけど、まだふつふつと沸騰している怒りのおかげでそんなものを気にする余裕もない。
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