第1章

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 魔女を好きになった。  それはいろいろささやかな、彼女が行う行為を目撃することで。 「最近怪我が多くて。そんなに不注意な方ではないんだが」 「委員長わぁー、恋に盲目なんじゃないすかあ?」 「は? なんだそれは」  彼女の友人は、大人しい彼女にはそぐわない、派手な、アタマの悪いタイプに分類されがちだ。だが、実際は彼女の友達らしい、思いやりのある人種だと僕は知っている。彼女は見る目がある。そんな2人が最近はやけに絡んでくる。後ろで彼女がアワアワとしているのが余計に不可解だ。  2人がにやにやと僕の袖を引き、強制的に下がった耳許で「あのこ、好きなんでしょ」と囁いてきた。 「なっ、違うぞ!?」  そんなもの、他人に指摘されて頷けるわけもない。 「ところがネタバレしてんだよねー。魔女に秘密は持てないよ~」  ……そういうことか! 「いや、それは、君たちに言うことじゃないだろ!」  うろたえてごまかす僕を彼女だけが心配そうに「ごめんね、違うならホントにいいの。……気をつけてね」と憂いを浮かべた。  不注意ここに極まれり。あろうことか交通事故に遭ってしまった。完全に先方の確認ミスだが、こちらの回避が間に合わなかったのは直前に目にゴミが入ったせいだ。  クラスの面々が代わる代わる見舞いに来る中、ほぼ最後の頃に彼女を含む女子3人が見舞いに現れた。だが骨折とはいえ入院している僕より遙かに彼女の顔色が悪い。なぜだ。 「単純骨折だからすぐ出られると医者からは言われている。これから年末だし、しばらく自宅でのんびりするさ。年明けの後期テストには充分間に合うんだ。まあ悪くない」 「委員長まじ発言がキモいわ」 「あたしはテストが潰れる方がいいー」  彼女の唇が緩んだので、僕の強がりは成功したようだ。ほとんど本気だが。  いつものように彼女はほとんど喋らず、2人がお約束とギブスにラクガキする姿をひっそりと眺めている。君もなにか書いていけばいいのにという願望は叶わず、友人2人だけがひとしきり騒ぎ、小一時間程で帰って行った。  静かになった病室は、さすがに温度差で少し寂しい。そうたそがれていると。 「委員長、その、いいかな」 「吾川さん?」
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