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スマホロイド・プロジェクト第1段階製造室。
Xの字型ストレッチャーが36床。赤色と黒色の2種類が交互に並んでいる。
ストレッチャーの上では全裸の男女が、仰臥状態で手足を拘束されていた。
手首と足首には鋼鉄製の手錠が食い込んでいる。そして首のまわりにも鋼鉄製の首輪が装着され、頭部には黄色い電極管がつながれていた。
赤色のXの字型固定台には18人の女たち、黒のXの字型固定台には18人の男たち。彼らは、スマホロイド製造室の白い天井を、うつろな目で見上げている。
Xの字の型に拘束されている彼らは、顔を左右に向けて様子を窺うことはできない。自由に動かせるのは眸と手足の指先だけだった。
「巻きこんでしまってごめんなさい」
麗奈は隣りの梶山雄一に話しかけた。
「いや、自分で望んだから、後悔してないよ」
雄一はパネル張りの天井を見つめながら答えた。
「でも、今は少しわくわくしてる。生まれ変わるみたいでさ」
「そうなの・・・?」
麗奈は訝しげに、目の動きだけで恋人の胸の辺りを追った。
「そんなに簡単にスマホロイドなんて、できるのかな。人間の体は複雑だよ。それも36人も一度のやるなんてさ」
「嘘くさいってか、麗奈。想像もつかない様な高度な技術があるんだろ。きっと」
「勇ちゃん、のんきねえ。わたし怖いよ。ゾンビに生まれ変わったりしたら・・・」
<只今より、スマホロイドCPUと脳神経の接続過程オペにはいります。フェンタニル系麻酔薬を投与>
二人の会話を遮るかのように、中性的なアナウンスが流れた。
天井のパネルが観音開きになって、Xの字型をした配線基板がゆっくりと降下してきた。
36基の基盤は、被験者36名の真上で一度停止した。
正確な位置確認のための針型のカメラアイが、基盤から蛇のようにくねりながら、全身をスキャンしていく。極細の観察機は、執拗に、体の上を停滞しながら這いまわった。
その状況は、別室の100インチモニタに映しだされていた。
リアルタイムの画像に見入っているのは、バトルルーレットに参加する客たちであった。
赤と黒に塗り分けわられたクロスが、巨大なテーブルに広がっていた。ルーレットだ。色とりどりのチップが、山積みになっている。
クロスの脇に、カーキ色の野球帽を目深にかぶった男が、腕組をしていた。
男の手元には、すり鉢状の円盤が置かれている。
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