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男は象牙製の玉を手のひらの中で転がしながら、無機質で黄色い眸を、猟奇的なショーを愉しむ客たちに向けた。
通称ルーレット男爵。
ルーレットルームを仕切る男。その黄色く濁った眼に感情はない。
男はかすかに顔の角度を変えた。
スマホロイド製造室から流れる音声が、術式にはいったことを伝えたからだ。
100インチモニタに、Xの字型ストレッチャーに横たわった36体の男女が映しだされた。
一糸まとわぬ男女の肉体が順番にフェードインされていく。
やがて、CPU基盤が彼らを覆い尽くした。
700℃で瞬間処理されたCPU基盤は、彼らの全身に焼き印を施す恰好となった。人間型タイ焼き機にはさまれたようなものだ。
まだ麻酔が効いていないのか、くぐもった苦悶の悲鳴がルーレットルームにも響き渡る。
ぶしゅ。ぶしゅ。ぶしゅ。
顔面から生殖器。手足の指先まで容赦なく、CPU配線が埋め込まれていく。皮膚に0.1ミリ未満の傷が無数に刻まれる。高精度にして、緻密な配線は、神経と血管、DNA細胞とコラボレーションするのだ。
内臓の奥深くまで、その電子機能は微細な網となって、霧のように拡散し、溶け込んでいった。
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