スマホロイド起動

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(的中した方はおめでとうございます。速やかにチップを回収して下さい) (次、入ります。チップをはって下さい)  ルーレット盤上を転がる象牙玉の乾いた音が、麗奈の耳にも届いた。  カラカラカラカラ カラカラカラカラ カラカラ・・・・  転がる象牙玉はスピードを次第に緩め、コトンと落下音。 (黒22番。梶山雄一、25歳!)  おおおお。どよめきが伝わる。 (的中した方はおめでとうございます。速やかにチップを回収して下さい) (皆さまにお知らせです。 赤16番の柳下麗奈と黒22番の梶山雄一は恋人同士であることが判明しました!バトルルーレットのルールによれば、例え相手が親しい間柄であっても、対戦を避けることはできません。 しかし、どうしても拒否したいのであれば、例外規定により、ある条件を承認すれば免除が可能です。 では、梶山雄一さんにその勇気があるか、確認してみましょう。 ミスター・ルーレット男爵、インタビュ―をお願いします!)  長い時間だった。  名状しがたい、羽音にも似た震動を、麗奈は感じ取った。彼女の神経は鋼鉄線のように固くはりつめた。監視の眼がいたる所に潜んでいるのがわかった。 (インタビューの前に、バトルルーレットの説明をしよう)  麗奈には、黄色くうつろな眼球を動かす、野球帽をかぶった人間の存在を認識することができた。  ルーレット男爵と呼ばれる男だ。だがその男の形状は人間と呼ぶにはふさわしいのかは、判断が困難だった。帽子の内側の頭部は、赤紫の太い血管が格子状に露出しており、空洞のような黄色い眼が虚空を見据えていた。 (これはスマホを人体と一体化したスマホ人間同士のバトルである。人間がスマホAiと合体すれば、これに勝る物はない。病気の予知予防、無数のアプリを同時に処理できる、まさに人間コンピューターの台頭の時代が到来した・・・)  演説は緊張感を助長させたにすぎなかった。   (・・・・スマホロイド同士の対戦がルーレットバトルである!赤は女、黒は男。・・・・これらは1対1の肉弾戦である。勝者は相手の全ての能力を摘出でき、敗者は廃人となって削除消去されよう)  麗奈の無機質な眸に天井のカメラアイが映った。レンズのフェードイン機能が作動し、自分と隣りの梶山雄一の画像がアップで、観客席へ転送されているのがわかる。カメラワークの目的は露骨な煽情効果だった。
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