第1章

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「先生。先生には誰にも言えない秘密の趣味ってあります?」 「おう、あるぞ」 「へえ。どんなのです?」 「そりゃ……っと、さりげなく人の秘密を暴こうとするなよ。ホント聞き出し上手だな、我が教え子よ」 「風紀委員ですからね。何か隠し事をしてないかと、つい聞きたくなるのです」 「いや、それはおかしな理屈だし。まあいい。先生の秘密の趣味を教えてやろうか」 「ホントですか。それを他人に教えないと秘密保持の約束はしますよ」 「難しい理屈はいいから……。じゃ、先生のロッカーの前まで来い」 「はい、来ました。って、ロッカーのなかに山積みになってる本……これは卒業アルバムですか?」 「ただの卒業アルバムじゃないよ。その時の教え子たちと一緒に撮った思い出のアルバムだ」 「これは私たちの入学式直後の一場面か。私、このときに何を考えていたんだろう。思い出せないや」 「先生は思い出を集めるのが趣味なんだよ。寄せ書きとかもあるぞ。これは八年前の卒業生のものだな」 「へえ。いろんな生徒がいて、卒業していったんですね」 「この世の中にはいろんな人がいて、いろんなことが成し遂げられていく。このアルバムにはその一場面があるんだな」 「毎年、たくさんの生徒が卒業していくんですものね。思い出もたくさんだ。先生はだから教師になったんですね」 「そうだ。っと」 「あっ。今何をメモしてアルバムに挟んだんですか?」 「言えない。それは秘密の趣味だからな」
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