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交錯
ある円(えん)の日の朝、9時。
カィン・ロルト・クル・セスティオは王立技能学校で試験会場を探していた。
この世界に生きるひとびとがそれぞれに持つ、土、風、水、火を扱う、異能の力を補助する石、彩石(さいしゃく)。
これを、より正確に見分ける技能を持つことを示す、彩石選別師資格取得のための国家試験を受けるのだ。
隣を歩くサリ・ハラ・ユヅリも同様だ。
今回の試験は新規資格取得者と資格更新をする者が同時に受けることになっている。
試験会場では、3人一組となるためか、3つの机を三角に組まれ、うちひとつには既に女性が着いていた。
黒髪に見えるが、光の加減で濃い赤色が混じっているのが判る。
珍しい色合いだ。
その瞳の虹彩は透明度の高い緑玉色、瞳孔は鮮やかな青だ。
やがて試験官が試験内容を説明する。
それによれば、彼らの組は、水の力の彩石を、指定力量…単位はカロン…ごとに選び出し、試験紙の定められた箇所に置く。
カィンはサイゴクを、サリはサイジャクを、先に居た女性はサイセキを選別する。
サイゴクは使用者の力を増大させ、サイジャクは減少させる。
そしてサイセキは、力そのものを内包している石だ。
試験時間になり、3人は最初に試験番号と名前を試験紙に書き、それから選別を始めた。
早くに終わった者たちは、望めば先に試験会場を出られる。
3人は結局試験終了時刻までそこにいた。
合否は後日伝達で通達される。
緊張から解放されたカィンとサリは、甘いものを食べに近くの甘味亭へと向かった。
この試験結果が問題を起こすとは、夢にも思わずに。
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