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奏音の時みたいに王子様は現れない。そんな事分かってる。 でも、頭に過る背の高いアイツ。 馬鹿だなぁ。ホント。私って馬鹿だな。 息が上がって苦しいのに涙が出そうになってさらに苦しくなる。 「羽音!」 声と共に奏音の姿が現れる。 「来ちゃダメ!」 奏音が見つかったらあいつ等絶対そっちに行っちゃう! 方向転換をしようとした瞬間、奏音を守る様に秀君と滝川琉生の姿も現れた。 良かった。二人が居るなら安心だ。 安堵感から足がもつれる。 受け身を取らなきゃ! 衝撃は訪れず、いや別の衝撃はあった。 気が付けば滝川琉生の腕の中にすっぽりと収まっていた私。 それと・・・ 「って!」 秀君が男の一人の胸ぐらを掴んで投げ飛ばす姿が目に入った。 「よってたかって女の子を追いかけまわして。 本当なら叩きつけたいけどさすがに痛いから止めてあげたから感謝して」 そう言い放った。 ポカンと口を開いたままの私と、ざわざわと集まる観衆。 投げ飛ばされた方も何が起こったのか分からなかったみたいだけどもう一人が抱え起こして二人去って行った。 「大丈夫か?」 凄く近い所から声がして滝川琉生の腕の中だという事に気が付き慌てて離れる。 「ごめん奏音!これは不可抗力であって」 思わず奏音に謝ると今度は奏音がポカン顔。 って、あれ?今何か変な事があったような・・・ 「羽音・・・勘違いしてない?」 「秀君が投げ飛ばした?」 ほぼ同時に全く違う言葉を発した私たち。 「秀君柔道やってるもん」 「滝川君が柔道やってるんだよね?」 またまた違う言葉を同時に発する。 「いや、面白いけど、とりあえず落ち着こう?」 秀君が笑みを浮かべて言う。 それに合わせて滝川琉生もうんうんと頷いている。 全く分からない。 そして何が勘違い? え?全部間違ってるって事?いや全部って何が全部よ。 思考が全く働かない。 「ほら、目立つし行くぞ」 滝川琉生に腕を持たれたまま歩き出す。 「捕虜だよ、それじゃあ」 秀君の冷めたツッコミが頭の中に響いている。
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