ミレイ君vs風邪

2/4
3267人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
 各町村で冬は越せる準備ができた。頂いた家畜を潰す事もなく春を迎えれることはとても嬉しい。部下達とやっと一息入れることが出来るのがこれ程嬉しいとは。  前任の伯爵が強いた統治の影響が聴いていたものよりも大きく、領主として視察した時愕然とした。  町も村も死んでいると思った。  町は建物だけはまともだったが、住民の疲れきった顔、痩せて動きも緩慢で怯えて僕を見たあの視線。  農村に至ってはとても言葉が出なかった。  あの伯爵は魔物だったのではないかと思った。本人は肥太り、屋敷も装飾品もきらびやかで不自由なく生活していたのに、なにも思わなかったのだろうか。使用人達も服装はそれなりだったが痩せていた。怯えと希望の混ざった視線で迎えてくれたっけ。  問題が発覚する数年前から老人と子供の死亡者が増えていた。怪我や病気で働けず税が納められなかったのだろう浮浪者の数も増えていた。  泣く暇もなかった。そんな暇があったら少しでも早く救援物資を届け炊き出しをし、細くなってしまった命を繋がなければ。  僕の護衛としてきた私兵の殆どをそれにあて、残りは屋敷にあった金貨と装飾品を他領に売り食料と薬に変え領民に配る。  王都の暮らしがどれ程恵まれたものなのか身をもって知った。今まで王族として受けた様々なものは国民が納めてきた努力と時間を費やしたもの。自分達の生活を少しでもより良くなるよう王家に納めてきたもの。  それなのに、あまりにも酷い。  初めて人を憎んだ。  
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!