1 アヤ

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  部屋のベッドでうつ伏せになって 携帯画面をせわしなく指を滑らせていると、 勢いよくドアが内側に開いた。 ジンは驚きドアに目を向けた時には バーンとドアが閉まりアヤが入って来ていた。 「…アヤ」っと声が出た。 なんだ、そのアホ面って悪態をつくアヤ 『ゲームしてんだろ、 サイトを開いて順位を確認したらジンが9位に入ってきたから、ちょっと見に来た』 って。 えぇーーって驚くオレ。 ゲームの上位には、いつもアヤの名前がある。 もっと順位を近付けたいけど… なかなかひとつの事に集中出来ないジン。  10位に入るのも容易じゃない… さっき、ようやく上手く消せて初めて順位に名前が入った所だった。 こっそり、やっているのがバレてたりして… チラッと横目でアヤを見る。 「アヤもやってたの」って聞く。 『やってたって言うか、  またまた見たって言うか… おい。アヤって呼ぶなって言ってるだろ』 見た?  …えー?  またその話。 「…だってー。ずーっと呼んでるし。 もともとアヤの名前が悪いんだろ」 ってオレは言う。 小さい時にアヤの難しい名前をちゃんと 呼べなかったジン。 アヤは 綾瀬 夜琉(あやせ やりゅう) 幼かったジンは、やりゅうって舌が回らず、 やにゅうって呼んではアヤに叩かれてた。 ジンは何度、呼んでも呼んでも呼べず叩かれて叩かれて諦めてアヤって呼ぶようになった。 悪いのはオレじゃないって言い続けているジン。 アヤがジンを名前で呼ぶのに ジンは夜琉って呼べない事が 幼かったジンは悔しくて悔しくて。 こっそり泣いた。 何度も呼んでみたけど、やっぱり呼べなくて諦めた。 今なら呼べるけど今更、恥ずかしくて 夜琉なんて呼べやしない、 ジンはそう思っている。 『人の名前のせいにするな』  ってアヤはまた怒る。
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