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カルボナーラ
伊賀の奴、本当に自分勝手だよね?私はあの男に随分と振り回された。
ショッパーズプラザの前にあるブルートレインに入った。ここのカルボナーラは最高にうまい。
クルルとカールした髭をいじりながらマスターが微笑む。「最近、野犬に困っていてな?」
ズルズルと音を立てて啜る。
「ケツ触らせろ、減るもんじゃねぇだろ?」
隣に宇崎竜童に似た男が座った。
「失礼ね!セクハラ!」
「昔、そーゆー歌が流行ったんだよね?」
「昔は昔、今は今」
マスターが苦笑する。「麗子様には叶わんなぁ」
顔立ちはメキシカンだが関西弁。
「こいつで追っ払ってくれよ」
マスターがピコピコハンマーをどこからともなく取り出した。脳ミソとろけてるンだべか?
「完全に負けるがな~、狂犬病になったら恐いから却下。飼い主が悪いのよ、育てられないんなら飼うな、うめー…梅酒とかある?」
「飲ませるとトドになるけぇのぉ」
マスターが菅原道真じゃないや、菅原文太を気取る。「トドかえ?そいつぁー、虎じゃなかんかえ?山守さん、わりゃあしびっとんのか?」
仕方なく突っ込んでやった。
「マスターと麗子で漫才師でもやったらどうよ?」 宇崎似の男は派遣会社を経営している。昔は、船乗りをしていたらしい。
伊賀は、北畠出版っちゅう会社で編集マンをしていた。最初はまともだったが電子書籍の登場で衰退、北畠はライターから多額の金を奪いトンズラした。伊賀は残務処理に苦しむこととなった。
私も、北畠に夢を潰された哀れなヒロインの1人だ。
『私の金を帰せ!』
しし座流星群が降った夜、私は北畠印刷に乗り込んできた。ナイフを持って暴れる麗子に、伊賀はビンタを喰らわせた。
『こんなことで人生を無駄にするな!』
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