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すると、彼は急に「そうだ!」と大きな声を上げた。
「いいこと思いついた。お前、俺の婚約者のふりをしろ」
「はい?」
彼は最高の思い付きをしたと言わんばかりの顔で、ワクワクしている様子がこちらにも伝わってくる。
「なんで出会って間もない男の婚約者にならなきゃいけないのよ!」
声を荒げて言うと、彼はしれっとした顔をしている。
「大丈夫だ、ふりだから」
「ふりでも嫌!なんで私が名前も知らない男の婚約者のふりなんか」
「そうか、お前、俺の名前知らなかったな。
俺の名前は東郷彰貴(とうごうあきたか)。
東郷財閥の一人息子だ。
ちなみにこのパーティーの主催は東郷財閥が取り仕切っている」
「なっ……」
とんでもない金持ちそうだとは思っていたけど、このパーティーの主催者だったなんて!
しかも、東郷財閥って、私でも聞いたことあるし!
何をしているかは全く知らないけど。
開いた口が塞がらず、言葉も失っていると、東郷彰貴と名乗る男は、目を悪戯に輝かせながら言った。
「それで、お前の名前はなんていうんだ?」
「え、私の名前……?」
冴木胡桃……と言いかけて、慌てて言葉を飲み込んだ。
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