伝統

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伝統

ポカポカした陽気と時折冷たい風が吹くそんな小春日和。 水深一メートル程の小さな湖畔のほとりでは、カップルや親子連れがのんびりと散策をしている。 そんななか、人の目に触れない大きな岩陰に子供達がコードがついた輪のようなものを片手にヒソヒソと密談をしていた。 「これ、最新式なんだぜ。イヤホンなんだけど、骨伝動式っていって、直接頭に響くから耳の穴にいれなくていいんだ。他にもなんかスゴい機能がついてるらしいんだけど、うちの親、企業秘密だとか言って教えてくれないんだよな」 「へぇー、よくわかんないけど、すごいんだね。あ、でもそれ、お前のオヤジの研究所から勝手に持ってきたんだろ?大丈夫なのか?」 「いいんだよ。どうせ試作品だし」 ヘッドホンを頭に装着し、スイッチを入れると、かすれたような機械的で不自然な声が二人の頭に響いてきた。 しかも、電波が悪いのかところどころ聞こえにくい。 いや、聞こえにくいというよりは、違う国の言葉のように聞こえるのか…。 二人の子供は、ヘッドホンからラジオのように流れてくる男達の会話に耳を傾ける。
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