第四段 出会い

3/12
80人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
沖田の背後で小さく聞こえた呟きを聞いて、ため息をつきながら刀を納めた。足元に転がった男の鞘を引き抜いて下げ緒を解くと、鞘のほうは少年に向かって放り投げる。 「うわっ」 「刀を」 下げ緒で転がった男を後手に縛り上げている間に、転がった刀を渋々と鞘に納めた少年がぶつぶつとこぼす。 「急に放り投げないでください」 「何を言ってるんです。それに、闇雲に人を斬る様に言わないでください。いちいち斬っていたら取調べができないでしょう?」 「あ、そうか」 やれやれ、と肩をすくめた沖田は、暗闇の中にいてもどうしようもない、と八木家の方へと歩き出した。 いきなり、傍にいた沖田が歩き出したので、動揺していると少し先から振り返った気配がする。 「その男はそのままにしておきなさい。あとで町方に運んでもらいます」 「あ……」 どうしよう、と迷う気持ちが伝わったのか、草履が近づいてくる。 ぽん、と頭に手をのせられた。 「あ、あ、あのっ!」 「うん?どうしました?」 ずるずると、そのまま首根っこを押さえられて、引きずられるように歩きながら、何とか逃げ出そうと暴れる少年に事も無げに問い返す。 「なにを、するん……!」 「気が変わりました。あなたは一度、屯所に連れて行こうと思います。ね?薫ちゃん?」 ああ、やっぱり……。 抵抗をやめた少年が呟いた。 「やっぱり……、わかりますよね」 ふっ、と笑う気配がして今度はあっという間に、肩の上に担ぎ上げられる。 「うわぁっ!」 「ははっ、軽いですねぇ。薫ちゃん?薫くん、かな」 軽々と担ぎ上げられたのは、逃げないようにという事だろう。確かに首根っこを押さえられたくらいではどこかで、隙をついて逃げ出せると思っていたが、抱え上げられてはどうしようもない。 「薫くん。君、何者か話してもらうよ?」
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!