第0章

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倉木『(あぁ、これは夢だ。まごうことなき夢だ)』 倉木『(こんなに美しい海にいるのに視界はぼやけていて、何が見えているか分からないのに海だと分かる)』 倉木『(この不思議で自分というものすらしっかり認識出来ない現象は正しく夢)』 倉木『(……あれから俺はこの夢を見続けている)』 倉木『(別に朝になれば普通に起きるし毎日夢をみるようなSFな日常を送っている訳じゃないが)』 倉木『(それでも、たまにみる夢のほとんどはこの海で、砂浜で海を眺めているものばかりなのだ)』 倉木『(ずっと海の景色が続く夢。横を向こうにも後ろを向こうにも何故か首が回らない)』 倉木『(首どころか、腕や脚の感覚すらない)』 倉木『(もしかすると俺は、夢の俺は人間としてここにいるわけじゃないかもしれない)』 倉木『(そこにあるかもしれない忘れられたビーチサンダルかもしれない)』 倉木『(遠い海の向こうから流れ着いたメッセージボトルかもしれない)』 倉木『(もしかすると、塩の香りかもしれない)』 倉木『(それらに俺がとりついて、この海を眺めているかもしれない)』 倉木『(まあ、どんなにロマンチックに想像しても夢は夢なんだから、キリがないと言えばおしまいだがな)』
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