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別に私はそれを不愉快だと思ったわけではないし、その場は楽しく過ごせるし、それはそれで良いとは思う。
ただ「遊ぶ」には良いけど、「彼氏」にするとしたら笑えない人達だ。
「ってかスカート履くかって? 分かんない、優梨に合わせるよ」
「ふーん。じゃあ行く時は、美咲ちゃんと一緒に準備する」
「そうだね、おっけー」
土曜日当日、私のアパートまで来た優梨は、黒いタイトなミニスカートにロングブーツを履いて、スカートとブーツの間に生脚を覗かせた。
ラメの入った白い薄手のコートが、優梨の小麦色の肌を一段と引き立たせてる。
「美咲ちゃんもコートは白にしなよ?」
優梨は何かあると「姉妹だから」と、私とお揃いの格好にしたり、同じ髪型にしたりする。
私はなんだかそれを可愛く感じて、いつも優梨の希望に応じてしまう。
ボーダー好きな私はボーダーのニットワンピに着替えて白いコートを羽織ると、いつもより多めにマスカラを重ねた。
「もう寒くなってきたね」
待ち合わせの駅へ向かう途中、私と優梨は、「ついこないだまで暑くて仕方なかったのにね」なんて、くだらない会話をした。
普段優梨と私の2人で過ごしている時は、お互いすっぴんに寝癖をつけてる私達。
化粧をばっちりキメている優梨なんて散々見たことがあるのに、なんだか別人を見ているような気分になった。
「お待たせー」
春野は背が高い。
目立つ程の高さではないけど、少しパーマのかかった黒髪が、遠目に見ても春野だとすぐに気付かせた。
「幼馴染みの稔(みのる)」
「はじめまして」
稔はキャップを深く被ったまま、軽く会釈をしたまま声を発しなかった。
「とりあえずどこか入ろうよ」
春野がだるそうに歩き始めて、私達は春野の後ろを着いていきながら、チェーン店の居酒屋に入った。
個室に案内されてようやく落ち着く。
個室で何するわけでも無いけど、土曜日の居酒屋はとにかくうるさい。
個室で仕切られてる方がまだ静かだし声も張らなくて済む。
私達は何を言うわけでもなく、男女向かい合う形で座って、私の正面には稔、優梨の正面には春野が座った。
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