第1章 金木犀の香り

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 別に私はそれを不愉快だと思ったわけではないし、その場は楽しく過ごせるし、それはそれで良いとは思う。  ただ「遊ぶ」には良いけど、「彼氏」にするとしたら笑えない人達だ。 「ってかスカート履くかって? 分かんない、優梨に合わせるよ」 「ふーん。じゃあ行く時は、美咲ちゃんと一緒に準備する」 「そうだね、おっけー」  土曜日当日、私のアパートまで来た優梨は、黒いタイトなミニスカートにロングブーツを履いて、スカートとブーツの間に生脚を覗かせた。  ラメの入った白い薄手のコートが、優梨の小麦色の肌を一段と引き立たせてる。 「美咲ちゃんもコートは白にしなよ?」  優梨は何かあると「姉妹だから」と、私とお揃いの格好にしたり、同じ髪型にしたりする。  私はなんだかそれを可愛く感じて、いつも優梨の希望に応じてしまう。  ボーダー好きな私はボーダーのニットワンピに着替えて白いコートを羽織ると、いつもより多めにマスカラを重ねた。 「もう寒くなってきたね」  待ち合わせの駅へ向かう途中、私と優梨は、「ついこないだまで暑くて仕方なかったのにね」なんて、くだらない会話をした。  普段優梨と私の2人で過ごしている時は、お互いすっぴんに寝癖をつけてる私達。  化粧をばっちりキメている優梨なんて散々見たことがあるのに、なんだか別人を見ているような気分になった。 「お待たせー」  春野は背が高い。  目立つ程の高さではないけど、少しパーマのかかった黒髪が、遠目に見ても春野だとすぐに気付かせた。 「幼馴染みの稔(みのる)」 「はじめまして」  稔はキャップを深く被ったまま、軽く会釈をしたまま声を発しなかった。 「とりあえずどこか入ろうよ」  春野がだるそうに歩き始めて、私達は春野の後ろを着いていきながら、チェーン店の居酒屋に入った。  個室に案内されてようやく落ち着く。  個室で何するわけでも無いけど、土曜日の居酒屋はとにかくうるさい。  個室で仕切られてる方がまだ静かだし声も張らなくて済む。  私達は何を言うわけでもなく、男女向かい合う形で座って、私の正面には稔、優梨の正面には春野が座った。
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