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第1章 金木犀の香り
4年前ーー
「ねぇ、今度の土曜日なんだけど、飲み会でもしない?」
突然私にそう言ったのは、後輩の優梨。
優梨は2個下の後輩で、私と優梨は暇さえあればいつでも一緒に居る。
「飲み会? 誰と?」
「春野と春野の幼馴染み。春野はお姉ちゃんも知ってるでしょー?」
私のことを「お姉ちゃん」と呼んだ優梨は、甘えるような口調でそう言った。
いつもは「美咲ちゃん」と私を呼ぶくせに、「お姉ちゃん」なんて甘える時は、何か貫き通したいことがある時だ。
「春野? 優梨、本当チャラい人好きだよね。幼馴染みってのは? 優梨は会ったことあるの?」
春野はほんの数週間前に飲み会で知り合った男の子。
優梨曰く「顔だけ見たらドンピシャでタイプ」なようで、優梨は春野の連絡先を聞いて盛り上がっていた。
ムードメーカーでその場を盛り上げていた春野は、確かに私にもかっこよくは見えたけれど、お世辞にも誠実そうだとか、一途そうとは見えないタイプの人種だ。
「幼馴染みは私も知らない人。春野と遊ぼうよーなんて連絡取ってたら、幼馴染み連れてくるから、優梨ちゃんも誰か連れてきてって。奢ってくれるって。いいでしょ?」
「そんな事まで確認したの? いいよ、分かった」
優梨は何かと積極的で、こうやって飲み会をする男の子を時々見つけ出してくる。
私は自他ともに認める男運の無さで、恋愛に興味が無いわけではないけど、最近はいつも中途半端なまま、まともな恋愛は出来ずにいる。
優梨が過去に主催した飲み会でも、何人か連絡先を交換して仲良くなる事があったけれど、私が男として見れなかったのか、相手が私を女として見れなかったのか、とにかく「付き合う」という事にはならなかった。
「幼馴染みもかっこいいのかな? やっぱ春野の幼馴染みじゃチャラいのかな? 美咲ちゃん土曜日スカートで行く? 幼馴染み、美咲ちゃんのタイプだったら良いね」
優梨はテンションが上がったのか、まくし立てるように一気に言った。
「正統派ではなさそうだよね・・・・・・なんていうかあの人の周り、タイプは色々だけど、基本的にチャラいじゃん」
前回の飲み会の時のメンバーも、芸人みたいな男の子と、なんだかおっかない見た目の男の子と、春野の3人だったけど、盛り上がるのは下の話ばかりで、他にも合コンがどうだとか、キャバクラがどうだとか、そんな感じだった。
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