はじまり

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小鳥の声もまだ聞こえない早朝に、 パソコンのキーボードカチカチ音が響く。 俺は小説家である。 小説家というと偉大な感じがするが、単に売れないライターといえばイメージはつくだろう。 親の仕送りで、なんとか賄っている。 家の中は、ゴミだらけ、床には丸めた、紙くずが山をつくる。 今、小説家の大きな穴、「スランプ」に陥っている俺は小説の題材を探すためにいろんな場所を毎日、動き回っていた。 商店街、公園、どこにいっても、ぴんとはこない。 このままでは仕送り生活で人生が終わってしまう、そんな危機感を持った俺は久しぶりに遠出することにした。 久々の電車は、ワクワクと不安が重なり、まるで小学生の頃初めて電車に乗った時の気持ちだ。 BIGF UN 平和島、羽田空港、京急百貨店いろいろな所に行く、京急沿線。 海に沿って、進むその沿線が、僕は昔から好きだった。昔、よく父親に連れて行ってもらった記憶がある。 車内はまだ空席だった。 そのままの状態でもいいのだが、外の景色を見たいためボックス式の座席に移動し腰かける。 品川という看板を通り過ぎた。
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