今日も侯爵令息は幼なじみの伯爵令嬢の所へ愚痴を言いに行く

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色とりどりの花が咲き乱れる伯爵家の庭園。 その一角に用意されたお茶会の席で、侯爵令息ジェードが盛大に吼(ほ)えた。 「何故だ!? どうして上手くいかないんだ!」 その様をこの家の娘にして、伯爵令嬢のルチルが紅茶を飲みながら冷ややかな目で見つめる。 もしこれが初めて、もしくは2回目くらいなら、ルチルも生暖かい目でそれなりに親身になって相談にのっていたかもしれない。 しかし、同じことがすでに7回。今回で8回目ともなると、さすがに「またか」とうんざりして来るというものだ。 「自分で言うのもなんだが、俺ほど将来有望な男はそうそういないぞ? 侯爵家の嫡男で侯爵位を継ぐことは確定済みだし、財力はあるし、顔だって、容姿だって、頭だって悪くない。剣の鍛練だって欠かさず行っているからひ弱でもない。年齢は23と、やや若輩の嫌いは否めないが、若すぎるということはないし、むしろ今後の伸び代に期待できる。これほど好条件の男が果たしているか? いや、いない!」 「その自信過剰な性格じゃないですか? すべての敗因は」 長々と己の自慢話を語る5歳年上の幼なじみを、爵位も年齢も下の伯爵令嬢ルチルが冷めた目で、ばっさりと切り捨てる。
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