第4章 狂い桜のリビングデッド

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 先程、バス停まで迎えに来た車の運転手は圭太であった。 「頼んでおいて正解やったわあ。その圭太は?」 「一旦家に戻って、ご家族の方を迎えに行ってくるって」  万里江の問いかけに颯太が答える。  続いてレイアが玄関の戸をくぐり、最後に愛里が入ってきて後ろ手に戸を閉める。 「ただいま、お母さん」 「おかえりなさい、愛里ちゃん。それと……あれやあ、すんごい別嬪(べっぴん)さん! 話には聞いてたけどホンマ綺麗やわあ!」  万里江が口に手を当てて驚くのも無理はない。なんといっても彼女の目の前のレイアは現在、東央大学で最も美しい女性なのだから。 「はじめまして。清水レイアです。神楽坂さんは私の人生で最も尊敬……」 「はーい、はいはい、ストップです! ここも冷えますし、早く上がりましょう!」  愛里は颯太とレイアの背中を押して無理やり家の中へと上がらせる。  それを見てなぜか万里江が泣いた。 「うう、子供の頃からろくに友達も作らんと勉強ばっかしてはった愛里がこんなに立派に友達こしらえて……」  それを見てがっくしと項垂れる愛里。無理もないが。 「神楽坂さん、本当にどんな子供時代過ごしてたんですか。泣くほど酷かったんですか」 「もーうー! お母さんも! 大袈裟なんだから、行きますよ!」  ズルズルと万里江のエプロンを引っ張ってずんずんと先を歩いていく愛里。よほど恥ずかしいのだろう。実際、コレを友人の前でやられたら颯太でも恥ずかしい。 「なんだか神楽坂さんの素が見れて私、感激です」 「本人はえらく迷惑そうだけどね」  レイアはとにかく嬉しそうだ。 「神楽坂さんはどこか他人と壁を作っている方ですよね。何かを怖がっているっていうか」 「そうだね。でも、これでも、丸くなった方なんだよ」  つい最近まで、愛里は停滞していた。不幸を忌み嫌い、不幸体質の颯太を近付けようともしなかった。  けれど、ふたりで次々と舞い込む事件を解決していくにつれて愛里は徐々に心を開いてくれるようになった。それに伴って以前より愛想が増した。  そして、彼女の本性が垣間見えるようになる。  優しく、気高く、誰よりも他人想いな愛里の本性が。 「福豊さんは何か知ってる風ですね」  きっと、愛里のことを知りたくてレイアもこうして旅に同伴したのだろう。 「まあね、お前より数ヶ月だけ神楽坂学の先輩だから」
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